中国印刷事情視察研修事業報告書

はじめに…

滋賀県印刷工業組合では過去3回中国印刷事情視察研修を行ってまいりました。その背景に有る事情は次のような物だったと思います。

現在の印刷業会は成熟化という構造局面の中で、様々な問題を抱えており、その問題一つ一つが日本国内のみに目を向けていると解決が難しいことばかりです。その事が印刷をやり続けるという意欲、そして、印刷の仕事で「夢」を持つことが出来ないと言う事実に中国を視野にれて考えていくことにより解決出来るのではないかと思い始めたからです。

5年前に縫製業界の中国人研修生受け入れ事業の面接に何気なく参加した時から、いずれ印刷業会にもこの波は来ると思い、上海の印刷会社を中心に見学し、ポケットマネーで企画会社の事務所の一部に机を置き、Macを持ち込んでインターネット経由でデーターのやり取りするようなまね事をしておりました。この時は痛い目にばかりあっておりましたが、他の人に聴く中国事情と自分の体験した中国事情の違いの大きさに違和感を持っていたのも事実であります。中国ブームでもありましたし、中国の経済発展にともない、日本国内には「脅威論と楽観論」がささやかれている中で、その実体は人から聴いた、本で読んだ事がそのまま大手を振って、自分自身での実体験にもとずかない話があまりにも多かったように思いました。

中国の可能性、自社を改善する上でのヒント、自分自身を元気にする事を見つける視察研修を企画し、行動して「滋賀県の印刷業を元気にしたい」「関西に活力を」と言う想いから当時の北村昌造滋賀県印刷工業組合理事長に相談した結果 、組合事業で行う是非が執行部会で協議され承諾していただき現在に至っております。

中国で儲けてやろうと言う意識から、中国の印刷、デザイン文化にいかに共生、貢献出来るかと言う風に考え方を変えたあたりから、中国に於ける人脈が急速に繋がっていったように思います。中国で印刷にかかわる事業をされておられる諸先輩方がおられる中で、偉そうなことを申し上げるつもりは毛頭ありませんが中国側にも日本側にも私たちの行っていることはかなりオープンであると思います。その様なことが中国側の大学関係者に支持されていますし、中国に於ける産学共同事業を準備中で、日本では不可能な事が出来つつあるというのが現状であります。

先日、1年半ぶりに訪れました上海では更なる加速度を付けて突っ走っている状態です。良虹印刷は三菱製の菊全4色機が2台になっていますし、デザイン会社のHEARTEN BUSINESS 社は2社の印刷会社に資本参加してデザイン印刷一貫体制を取っています。驚くべきスピードです。2年前の上海のレポートはもう古くて実体にあわなくなっているところが多いと思われます。

そして、これらのレポートは中国のある一面です。大きく広い中国をこれらで言い表せるものではありませんし、その場で見聞した事実をレポートしているにすぎません。その点をご考慮いただきお読みいただければ有難いです。

2004年7月20日

有限会社 田中印刷所 代表取締役 田中 由一